住宅や建物のトラブルの中でも、意外に見落とされがちなのが「配管の共有」に関する問題です。特に集合住宅や連棟式住宅(テラスハウスや長屋)などでは、上下水道・ガス・給湯・排水などの配管が隣家や他の住戸とつながっているケースがあり、故障・漏水・修理の際に予想外のトラブルへと発展することがあります。
この記事では、「配管を共有している」場合の注意点や問題点、法的な取り扱い、トラブル発生時の対応策などをわかりやすく解説します。
配管の共有とは、複数の建物や住宅が1本または複数の配管(給水・排水・ガス管など)を共通して使用している状態を指します。以下のような建築形態でよく見られます。
共有配管が詰まったり破損した場合、どの住宅が原因なのか、誰が修理費を負担するのかが不明確になることがあります。原因調査や費用負担の分担をめぐって隣人とのトラブルに発展することも少なくありません。
排水管や下水管が詰まったり劣化して破損すると、逆流や漏水によって自宅に異臭・水漏れなどの被害が及ぶ可能性があります。隣家で起きたトラブルでも、自宅の床や壁が被害を受けるケースも。
建物の建替えやリフォームを行おうとすると、「この配管は他人の家とつながっているので勝手に撤去できない」「新しい配管を引くには隣地の了承が必要」といった制約が発生し、計画が難航することがあります。
配管の共有がある物件は、買主が嫌がる要素として捉えることもあります。建築的な独立性や将来的な修繕のリスクを懸念し、売却価格の減少や取引が成立しにくくなることも。
配管の共有自体は違法ではありません。むしろ、設計上・構造上の合理性から認められている場合がほとんどです。ただし、次のような観点で法的トラブルが生じやすくなります。
民法第209条では、以下のように規定されています。
「土地の所有者は、他人の土地を通じて必要な配管などを通す権利を制限される」
つまり、配管が隣地の地中を無断で通っている場合には、将来的にトラブルや撤去命令が出る可能性もあるということです。
マンションや団地などの集合住宅では、管理規約で配管の責任範囲が定められていることがあります。規約の内容によっては、個人で勝手に改修できなかったり、修理費を全戸で負担する仕組みが取られていることもあります。
必要に応じて、建築士や配管業者に調査してもらうことで、配管の経路・劣化状況・将来的なリスクなどが明らかになります。特にリフォーム・増築を検討している場合には必須です。
漏水・詰まりなどのトラブルが発生した場合には、被害状況を写真や動画で記録しておきましょう。また、どの部分が共有配管かを特定するために、業者による調査(ファイバーカメラや配管図参照)を行います。
隣人の理解が得られるように、丁寧な説明と協議が必要です。直接の会話が難しい場合には、書面や第三者(自治体・管理組合など)を通じて対応するのが望ましいです。
原因の所在や過失の有無によって、修理費や損害賠償の負担割合が変わります。示談が難しい場合には、専門家(弁護士、司法書士)に相談し、「調停」や「簡易裁判」を検討することも可能です。
工事費はかかりますが、単独配管に切り替えることで将来のトラブルを防ぐことが可能です。特に築年数の古い家では、配管の寿命が迫っていることも多いため、リフォーム時に同時に見直すとよいでしょう。
共有が避けられない場合でも、書面で使用ルールや費用分担を明記した合意書を作成しておくことが安心材料になります。売却や相続時にもトラブルを回避しやすくなります。
配管は建物の内部や地中に埋設されているため、普段の生活では意識されにくい存在です。しかし、いざ問題が発生すると生活に直接的な影響を及ぼすため、非常に重要なリスク管理項目でもあります。
これらが、安心で快適な住環境を築くための第一歩です。
住まいや建物の安全性を「見える化」し、後悔のない選択をしていきましょう。