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2025.07.10 Topics

「配管を共有している」住宅のリスクとトラブル対策|知らないと損する基礎知識

住宅や建物のトラブルの中でも、意外に見落とされがちなのが「配管の共有」に関する問題です。特に集合住宅や連棟式住宅(テラスハウスや長屋)などでは、上下水道・ガス・給湯・排水などの配管が隣家や他の住戸とつながっているケースがあり、故障・漏水・修理の際に予想外のトラブルへと発展することがあります。

この記事では、「配管を共有している」場合の注意点や問題点、法的な取り扱い、トラブル発生時の対応策などをわかりやすく解説します。


1. 配管の共有とは?どういう状態?

配管の共有とは、複数の建物や住宅が1本または複数の配管(給水・排水・ガス管など)を共通して使用している状態を指します。以下のような建築形態でよく見られます。

  • テラスハウスや長屋(壁でつながっている住宅)
  • 古いマンション・アパート
  • 境界線をまたいで配管が敷設されている戸建て
  • 建売住宅などで敷地内の引込管が共用化されている場合

主に共有されやすい配管の種類

  • 給水管(水道メーターの手前まで)
  • 排水管(下水道本管への接続まで)
  • 雨水排水管
  • ガス管
  • 給湯・暖房の配管(床暖房や集中給湯など)

2. 配管を共有していることの問題点

2-1. 故障時の責任範囲が不明確

共有配管が詰まったり破損した場合、どの住宅が原因なのか、誰が修理費を負担するのかが不明確になることがあります。原因調査や費用負担の分担をめぐって隣人とのトラブルに発展することも少なくありません。

2-2. 漏水・悪臭などの生活被害

排水管や下水管が詰まったり劣化して破損すると、逆流や漏水によって自宅に異臭・水漏れなどの被害が及ぶ可能性があります。隣家で起きたトラブルでも、自宅の床や壁が被害を受けるケースも。

2-3. リフォーム・建替え時の障害になる

建物の建替えやリフォームを行おうとすると、「この配管は他人の家とつながっているので勝手に撤去できない」「新しい配管を引くには隣地の了承が必要」といった制約が発生し、計画が難航することがあります。

2-4. 売却時のマイナス要因

配管の共有がある物件は、買主が嫌がる要素として捉えることもあります。建築的な独立性や将来的な修繕のリスクを懸念し、売却価格の減少や取引が成立しにくくなることも。


3. 配管の共有は違法なの?

配管の共有自体は違法ではありません。むしろ、設計上・構造上の合理性から認められている場合がほとんどです。ただし、次のような観点で法的トラブルが生じやすくなります。

3-1. 境界線を越えて配管が通っている場合

民法第209条では、以下のように規定されています。

「土地の所有者は、他人の土地を通じて必要な配管などを通す権利を制限される」

つまり、配管が隣地の地中を無断で通っている場合には、将来的にトラブルや撤去命令が出る可能性もあるということです。

3-2. 団地・長屋などで管理規約が存在する場合

マンションや団地などの集合住宅では、管理規約で配管の責任範囲が定められていることがあります。規約の内容によっては、個人で勝手に改修できなかったり、修理費を全戸で負担する仕組みが取られていることもあります。


4. 配管共有の確認方法とチェックポイント

4-1. 不動産購入時・引越し前に確認すべきこと

  • 上下水道の配管図があるか(市町村の水道局で取得可能)
  • 売買契約書・重要事項説明書に配管共有の記載があるか
  • 隣家との境界確定がされているか
  • 修理やトラブル時の負担割合の取り決めがあるか

4-2. 現地調査・専門家の確認

必要に応じて、建築士や配管業者に調査してもらうことで、配管の経路・劣化状況・将来的なリスクなどが明らかになります。特にリフォーム・増築を検討している場合には必須です。


5. トラブルが起きたときの対応方法

5-1. まずは状況確認と証拠収集

漏水・詰まりなどのトラブルが発生した場合には、被害状況を写真や動画で記録しておきましょう。また、どの部分が共有配管かを特定するために、業者による調査(ファイバーカメラや配管図参照)を行います。

5-2. 隣人・管理者への連絡

隣人の理解が得られるように、丁寧な説明と協議が必要です。直接の会話が難しい場合には、書面や第三者(自治体・管理組合など)を通じて対応するのが望ましいです。

5-3. 修理費用の分担・損害賠償

原因の所在や過失の有無によって、修理費や損害賠償の負担割合が変わります。示談が難しい場合には、専門家(弁護士、司法書士)に相談し、「調停」や「簡易裁判」を検討することも可能です。


6. 共有配管を将来的に避けるには

6-1. 独立配管への切替

工事費はかかりますが、単独配管に切り替えることで将来のトラブルを防ぐことが可能です。特に築年数の古い家では、配管の寿命が迫っていることも多いため、リフォーム時に同時に見直すとよいでしょう。

6-2. 共有契約の明文化

共有が避けられない場合でも、書面で使用ルールや費用分担を明記した合意書を作成しておくことが安心材料になります。売却や相続時にもトラブルを回避しやすくなります。


7. まとめ|「配管共有」は見えないリスク。見える化と合意がカギ

配管は建物の内部や地中に埋設されているため、普段の生活では意識されにくい存在です。しかし、いざ問題が発生すると生活に直接的な影響を及ぼすため、非常に重要なリスク管理項目でもあります。

  • 配管のルート・共有状況を把握すること
  • トラブル時の対応と責任を事前に整理しておくこと
  • 隣人との関係性や契約内容を明文化しておくこと

これらが、安心で快適な住環境を築くための第一歩です。
住まいや建物の安全性を「見える化」し、後悔のない選択をしていきましょう。