近年、日本では空き家問題が社会問題化しており、自治体や国も様々な対策を講じています。その中で、相続した空き家を売却する際に活用できるのが「空き家特例(空き家控除)」です。うまく活用すれば、最大3,000万円の譲渡所得控除が受けられ、税負担を大幅に軽減することが可能です。本記事では、空き家控除の概要、適用条件、手続きの流れ、注意点まで詳しく解説します。
空き家控除(正式名称:居住用財産の3,000万円特別控除の特例)は、相続によって取得した空き家を売却する際、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。
譲渡所得とは、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた利益のことで、通常は以下の計算式で求められます。
譲渡所得 = 売却価格 − (取得費 + 譲渡費用)
通常、不動産売却による譲渡所得には20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)の税金が課せられます。しかし、空き家控除を使うことで、譲渡所得3,000万円まで非課税となり、大幅な節税が可能です。
空き家控除を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。条件を満たさなければ控除は適用されませんので、注意が必要です。
空き家控除は、相続発生から3年以内に売却した場合に適用されます。
例えば、2025年1月1日に父親から空き家を相続した場合、2027年12月31日までに売却する必要があります。3年を過ぎると控除は適用されません。
控除対象となるのは、被相続人が居住していた住宅または相続人が住むための住宅です。賃貸用の物件や事業用の建物は対象外となります。
昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の建物である場合でも、耐震診断で安全性が確認されれば控除適用可能です。ただし、解体して土地として売却する場合も条件によっては控除が適用されます。
売却前に物件が他人に貸与されていたり、事業に利用されていた場合は控除対象外となることがあります。また、固定資産税や登記の滞納があると手続き上不利になる場合があります。
空き家控除を受けるには、売却後に確定申告を行う必要があります。主な流れは以下の通りです。
譲渡所得は「売却価格 − (取得費 + 譲渡費用)」で計算します。
譲渡所得の計算後、確定申告書に「居住用財産の3,000万円特別控除」の適用を記載します。添付書類として以下が必要です。
確定申告は、原則として売却した翌年の2月16日から3月15日までに行います。期限を過ぎると控除が受けられなくなる可能性があります。
空き家控除を活用する最大のメリットは、税金の大幅な軽減です。具体例で見てみましょう。
例1:譲渡所得が3,500万円の場合
→ 税金が約6,000,000円以上も減額されます。
空き家控除には大きなメリットがありますが、注意点もあります。
相続後3年以上経過していたり、住居用でない場合は控除が受けられません。
老朽化した建物を解体して土地として売却する場合、解体費用が高額になることがあります。控除額より費用が上回る場合もあり、事前に試算が必要です。
相続登記をしていない場合は、まず登記手続きが必要です。相続登記にかかる登録免許税や司法書士費用も考慮しましょう。
空き家控除は非常に有効ですが、必ずしも全員に最適というわけではありません。以下の点も検討しましょう。
空き家控除は、相続した住宅を売却する際の強力な税金対策です。最大3,000万円の控除により、譲渡所得税を大幅に減額できます。しかし、適用条件や手続きが複雑なため、事前の準備と確認が不可欠です。
ポイントをまとめると以下の通りです。
適切に活用すれば、空き家を売却する際の税金負担を大幅に減らせる制度です。特に相続後に空き家を放置している方は、早めの売却と空き家控除の活用を検討すると良いでしょう。