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2025.07.10 Topics

【私道の持ち分がない家】そのまま住んで大丈夫?リスクと対処法を徹底解説

不動産を購入・売却する際に、「私道(しどう)」という言葉に直面したことがある人は少なくありません。中でも注意すべきなのが、**「私道に接しているけれど、その私道の権利(持ち分)を持っていない」**というケースです。

一見すると普通に暮らせているように見えるこのような物件でも、実は重大なリスクが潜んでいます。この記事では、私道の持ち分がない場合に起こりうるトラブル、法的な観点、売買の際の注意点、対処法などをわかりやすく解説します。


1. 私道とは?公道との違い

まず「私道」とは、公道(国・自治体が管理している道路)ではなく、個人や法人などの私有地で構成された道路のことを指します。住宅街や袋小路の奥まった土地などでよく見られます。

項目公道私道
管理者国・県・市区町村個人・法人・共有者など
通行の自由基本的に自由所有者の同意が必要な場合も
工事許可自治体の許可所有者または共有者の同意

一戸建てや分譲住宅などでは、**「建物は所有しているが、敷地が接する道路が私道で、その私道の権利を持っていない」**というケースが意外に多く見られます。


2. 私道の持ち分がないとどうなる?

2-1. 通行権に関する問題

持ち分がないということは、法律的にはその道を勝手に使う権利がないということになります。これが原因で以下のような問題が起こることがあります。

  • 隣地の所有者から「通るな」と言われる(実際に裁判例あり)
  • 通行や車の出入りを妨害される(門やフェンスを設置される)
  • 通行権の法的根拠が曖昧で不安定

通行権が黙認されているケースもありますが、関係が悪化すると突然通行を制限される可能性もあります。

2-2. ライフラインの引き込み・修繕工事ができない

水道管・ガス管・下水管・インターネットケーブルなどのライフラインが私道を経由している場合、修繕や新設には私道所有者の同意が必要です。

  • 水道局が工事を拒否するケースも
  • 私道所有者が協力しないと費用負担が跳ね上がる
  • 新築・建替えの際にインフラ整備がストップすることも

2-3. 建築許可が下りない

建築基準法では、原則として「幅員4m以上の道路に2m以上接している土地」でなければ建築許可が下りません(接道義務)。

私道に接していても、その私道の持ち分がないと「道路と見なされない」ケースがあり、建替えができなくなるリスクもあります。


3. なぜ持ち分がない家が存在するのか?

意図的に権利を持たせなかったというより、過去の分譲や建売開発の過程で以下のような理由から「持ち分なし」の状態が発生することがあります。

  • 分譲当時の業者が私道の登記を移転しなかった
  • 相続や売買の過程で権利関係が曖昧になった
  • 細かく持ち分を分割する手間や登記コストを回避した
  • 地元の慣習で「持ち分がなくても黙認されていた」

つまり、悪意があったわけではなく制度や管理の曖昧さによって生まれた状態なのです。


4. トラブル事例とリスク

4-1. 私道の通行料を請求された

「通行は構わないが、月々○千円支払え」と、私道所有者が通行料を請求してくるケースがあります。支払いを拒否すれば「通行禁止」などの嫌がらせをされることも。

4-2. フェンスで道を封鎖された

持ち分を持つ住人同士がトラブルになり、無関係の住民(持ち分なし)が巻き添えになって道を封鎖されることもあります。話し合いが決裂すれば裁判にまで発展することも。

4-3. 道路修繕費を請求された

私道は持ち主が管理責任を負っているため、**舗装や排水整備などの修繕費が請求されることがあります。**ただし、持ち分がない場合でも「使用している」という理由で一部負担を求められるケースもあります。


5. 私道の持ち分がない場合の確認と対処法

5-1. 登記簿で私道の所有者を確認する

物件の謄本だけでなく、私道部分の登記簿を取得し、以下の点を確認しましょう。

  • 所有者は誰か(個人か法人か、複数か)
  • 所有者の数・共有持ち分の割合
  • 住所が一致するか(既に死亡しているケースも)

5-2. 通行承諾書の取得

持ち分がない場合でも、**「通行承諾書」や「ライフライン敷設承諾書」**を取得しておくことで、将来のトラブルを回避できます。

  • 書面で明記された通行・敷設の同意があると安心
  • 法的な証拠として通用する
  • 売買や相続の際にも有利に働く

5-3. 持ち分の購入交渉

可能であれば、私道の持ち分を購入しておくことで将来的なリスクを大幅に回避できます。ただし、所有者が複数人いる場合や連絡が取れないケースも多く、交渉には時間と労力がかかります。


6. 購入・売却時に気をつけるポイント

6-1. 不動産購入前にチェックすべきこと

  • 接道状況(幅員4m以上か/建築基準法上の道路か)
  • 私道であるか、公道であるか
  • 登記簿で持ち分の有無を確認
  • 通行・ライフラインの承諾書があるか
  • 不動産会社に「通行権・工事権は問題ないか」確認する

6-2. 売却時の注意点

  • 持ち分なしで売却すると価格が下がる傾向がある
  • 買主が住宅ローンを組めないことも(金融機関の評価が低いため)
  • 売却前に通行承諾書を用意しておくと有利

7. 最後に|「私道の持ち分がない」は、無視できない重要事項

「家の前の道路に持ち分がない」ことは、日々の暮らしでは目立ちにくい問題かもしれません。しかし、建替え・売却・相続・修繕・隣人関係といった将来のライフイベントに直結する、非常に大きなリスクでもあります。

✔ チェックポイントまとめ

  • 私道か公道かを確認する
  • 登記簿で持ち分を調査する
  • 承諾書の有無を確認・取得する
  • 必要なら持ち分取得の交渉を
  • 不安がある場合は専門家に相談を

不動産取引の「落とし穴」として知られる「私道の持ち分問題」ですが、正しい知識と事前の準備があれば十分にリスクは回避できます。大切な資産である不動産だからこそ、安心・安全な取引と暮らしのために、丁寧な対応が求められます。